みんなの誤解を解く

木を植えるだけでは、
森は出来ない

「ミツバチ巣箱」プロジェクトや「ハチ宿」プロジェクトを進めていると、多くの誤解や障壁に出合います。その誤解を解くこともビーフォレスト活動になっています。

例えば、生物多様性の話の中で「世界中でミツバチが減って大変なんですね!」と、よく尋ねられます。この質問の中にいくつかの誤解が潜んでいるのです。その原因の発端は、海外の英語のニュースの「bee」です。

日本では「bee」を「ミツバチ」と訳されています。しかし、実際の意味は「花バチ」です。それも野生の「花バチ」を指す場合が多いのです。
「世界中でbeeが減って大変なんですね!」は、本来「世界中で野生の花バチが減って大変なんですね!」と言う情報の話なんです。
ところが「花バチ」って何ですか?・・・花バチが分からない!?
※養蜂のミツバチ(家畜)は近年、世界中では増加しています。

正しく理解しないと「みんなの誤解が自然を壊す!?」ことになります。

〈 8つの誤解 〉

  • ①木を植えるだけでは、森は出来ない!?
  • ②日本は、世界第三位の森林大国!?
  • ③ハチは怖い!?
  • ④日本人のミツバチのイメージ
  • ⑤ミツバチはみんな同じ?
  • ⑥ミツバチが消える世界的な危機?
  • ⑦西洋ミツバチ養蜂の脅威
  • ⑧誰も知らないミツバチ感染病パンデミック!

木を植えるだけでは、森は出来ない!?

自然環境の回復活動の中でもオーソドックスな方法として、世界的にも広がっている木を植える(植樹)活動があります。しかし、活動の目的は木を植えることだけでは無く、それが育って自然の森を作ることだと思います。その森は、人々が常に植栽をして維持する森では無く、多様な生物が発生して生態系を形成して機能することにより、自然の循環によって自然増殖する森ではないでしょうか?

地球上には、約26万種の被子植物があり、その内の約90%が、昆虫や鳥などのポリネーター(送粉者)によって受粉してもらわないと木の実や種子(子孫)を残せない植物です。
人工林や果樹栽培、公園や庭造りとは異なる、このような森づくりには、ポリネーターを意識した地域にふさわしい植物の選択と共に、ポリネーターの生息環境も意識した森づくりを進める必要があると考えます。

日本は、世界第三位の森林大国!?

日本の森林の状況については、自然林の減少を参照下さい。

ここでは、「森林」という呼び方について誤解を解きたいと思います。
一般に「森づくり」を「森林づくり」と何故呼ばないのでしょう?
調べてみると、一般に「森」とは、自然発生的に形成されるものとあります。
そして、「林」とは、生やす(はやす)などから、人為的に栽培する場合に使われる言葉から派生したと言われます。スギ林、梅林など植林や果樹などは主に「はやし」を付ける場合が多いですね。
「森林」は、意味が異なる「森」と「林」の熟語になっています。

日本は、世界第三位の森林大国です。その内容は、1/3は「森」、1/3は「林」(人工林)という説明になります。自然の「森」が、2/3を占める森林大国ではないことを確認して下さい。

ちなみに、「林」(人工林)を「森林」と呼ぶと混乱するので、意味を理解しましょう。「森」は、自然発生的に生まれた自然環境です。「林」(人工林)とは、「畑」のように作物を栽培して収穫し、販売する目的があるモノです。

ハチは怖い!?

ハチは何でも怖い!と言って、嫌う人が沢山います。そして、ハチを目に敵のように直ぐに殺そうとします。ちょっと待って下さい!

日本では、「刺す昆虫」を総称して「ハチ」と呼んでいるように思われます。しかし、海外では「Bee」(ビー)と「Wasp」(ワスプ)の2つに分けて教えているようです。
「Bee」は、花の蜜や花粉を食べて草木の花に受粉する昆虫「花バチ」です。
ミツバチ以外にも、マルハナバチやクマバチ、ハキリバチ、マメコバチなどが「Bee」と呼ばれます。
「Wasp」は、「狩り蜂」と呼ばれて、針で他の昆虫を刺して殺したり、麻痺させたりして食べたり、体内に卵を産んだりして生きています。アシナガバチやスズメバチなどです。

「Bee」も「Wasp」も生態系にとって重要な役割を担っています。刺されるから怖い!から殺すのでは無く、一歩踏み込んで、役割や特徴を知ることによって、距離関係を意識し、状況に応じた対応を考えることが大切です。

日本人のミツバチのイメージ

貴方は「ミツバチ」と聞いてどのようなイメージを浮かべますか?

みなしごハッチ/マーヤ/森のプーさんとミツバチ/黄色と黒の縞模様のキャラクター/レンゲ畑や菜の花畑/レンゲやアカシヤの蜂蜜/白い服を着た養蜂家の風景/移動する養蜂家/などなどではありませんか?・・・実は、それらは全て外来種の「西洋ミツバチ養蜂」のイメージなんです。
日本人のほとんどの方のミツバチのイメージは、西洋ミツバチやその養蜂なんです。このため日本には「日本ミツバチ」がいることやそれを増やす為のビーフォレスト活動を説明しようとしても、通じない場合が生まれます。

「守るべきミツバチや自然のイメージ」を共有出来なければ実現は難しいです。このイメージの転化を図ることが、日本のミツバチや自然を守るためには必要なことだと感じています。

ミツバチはみんな同じ?

「日本人のミツバチのイメージ」で分かるように、ほとんどの方はミツバチは皆同じだと思っています。
日本には、太古の昔から森に棲んでいる野生の「日本ミツバチ」がいます。※大和ミツバチ研究所では、敢えて「大和ミツバチ」と呼んでいます。そして、もう1種類「西洋ミツバチ」がいます。

明治のはじめに、養蜂技術と共にアメリカから移入されました。それまでは、日本ミツバチの蜂蜜を採っていた方は、蜂蜜を採る場合は、まず自然のミツバチを捕獲する必要があります。野生の日本ミツバチは扱いにくいので、捕獲しないでも家畜で人工的に増やす事が出来る西洋ミツバチ養蜂に転換していきました。

昔は、蜂蜜が今以上に貴重なので、生産性の高い西洋ミツバチ養蜂は、一気に全国に広がり養蜂産業として発展していきました。
このように西洋ミツバチと日本ミツバチが日本には生息しています。それぞれ役割が違います。
家畜の西洋ミツバチは飼い主(養蜂家)のために働きます。方や野生の日本ミツバチはトンボや蝉のように私たちの自然の一部です。生物多様性や生態系に役立つのは、野生の日本ミツバチです。

ミツバチが消える世界的な危機?

ニュースで、「ミツバチが大量に失踪していなくなった」とか「農薬でミツバチが大量に死んでいる」など、「このままミツバチがいなくなると、大変なことになる!人類も滅ぶ!」とよく聞きますが、実は、これらも大きな誤解です。
海外のミツバチニュースのほとんどは、日本で伝える側も「Bee:家畜の西洋ミツバチ」と「Bee:野生の花バチ」を混同しています。
世界的に「家畜の西洋ミツバチ」は年々増えています。ニワトリなどと同じ様に人工的に増やせるので需要に応じて増えています。農薬などの影響で減る場合は、農家と養蜂家の問題なのです。

本当に減って困るのが「Bee:野生の花バチ」です。
日本では、Beeを「ミツバチ」と訳してしまうために、「花バチが減少して大変なことになる!」ことを「ミツバチが減少して大変なことになる!」と報道する場合が多いようです。
気候変動など環境異変を引き起こす要因であり、生物多様性の喪失の原因として「野生の花バチ」の減少が世界的な問題となっています。しかし、このような問題や課題が日本国内には正確に伝わっていないのが現状です。
ちなみに日本ミツバチも「野生の花バチ」の代表的な仲間です。

西洋ミツバチ養蜂の脅威

家畜の西洋ミツバチは養蜂の技術と共に、明治9年頃にアメリカから伝わり全国に広がっていきました。その頃には、生物多様性や生態系など自然環境や自然保護についての意識すらなかった時代です。それが時代変化と共に価値を見直さねばならない時代に来たのは、戦後に日本中に沢山のダムが出来たことと似ています。
豊かさを求めて高度成長経済社会が到来し、それに応えるように急速に自然利用や消費が進みました。しかし、過剰な経済活動が気候変動などの環境破壊を生み、成熟社会と言われる現在では失ったモノを見直す気運が高まっています。
生物多様性や生態系など自然環境をいかに取り戻せるかが大きな課題となってきたのです。

昆虫の世界では、西洋ミツバチ養蜂の自然環境への影響が問題になってきています。
1)西洋ミツバチ養蜂による野生「花バチ」の減少問題。
養蜂は、その地域の野生「花バチ」の食料となる花の蜜を奪ってしまいます。その結果「花バチ」がいなくなってしまう問題です。誰も議論しないのは何故でしょうか?生物多様性や生態系も守るには避けて通れない問題でしょう。
2)西洋ミツバチの輸入と同時に日本国内に持ち込まれたと考えられているミツバチ感染病のアカリンダニ症。2010年に長野県で発見されて、今では日本中に広がって日本ミツバチが激減する要因となっています。ところが、この事実をメディアも環境省も自治体も全く把握していません。大問題です。
3)分蜂放置問題
西洋ミツバチが分蜂して野生常態化している。日本ミツバチ巣箱に営巣したり野生化も見られる。(※野生化は、沖縄や小笠原諸島などの事例があります)

★上記の問題解決については、この事実が顕在化して、生物多様性や生態系レベルで議論が進むことが期待されます。

誰も知らないミツバチ感染病パンデミック!

2010年に長野県で最初に家畜保健衛生所に届けられたアカリンダニ症というミツバチの伝染病があります。20世紀初頭、イギリスで西洋ミツバチに発症し、ヨーロッパ全土に広がり壊滅的な影響を与えましたが、やがて耐性を持った西洋ミツバチが出現して全滅には至らなかったようです。しかし、その後保菌したまま世界中に広がった西洋ミツバチが、21世紀初頭に日本に輸入西洋ミツバチと共に入ってきたと考えられます。大和ミツバチ研究所においては、2015年頃には100群ほどの日本ミツバチを管理していたのが2016年までにアカリンダニ症などによって全滅しました。
近畿全土に広がり、その後全国に広がっていることが確認出来ました。

アカリンダニ症によって死んだ蜂群は、都道府県にある家畜保健衛生所に届けなければなりません。
奈良県では2021年までに5件ほどの届出しか有りません。その全てがNPO法人 ビーフォレスト・クラブ関連の届出です。日本ミツバチ養蜂家といわれる人たちもアカリンダニ症によって相当数死んでいくのを毎年確認しているにもかかわらずなぜか届けません。
西洋ミツバチにも感染する訳ですが、処分する指示を受けることが分かるために西洋ミツバチ養蜂家も届けないようです。
農林水産省の監視伝染病の発生状況を見ても、届出数は毎年拡大しているものの、実際の発症数の数百分、数千分の一程度しか届け出ていないと推測されます。そして、届出数につき1とカウントされるようですので、感染蜂群数はその数倍から数十倍に拡大すると思われます。大変な発症数に至っているはずなのですが、実際のデータは遙かにかけ離れています。また、この事実を検証する術がないのです。ですから自治体や農林水産省、環境省をはじめ、政府はこの実態を全く把握出来ていないのが実情です。

家畜保健衛生所は、「家畜」を対象としています。農林水産省の監視伝染病の発生状況の項目は「家畜の種類」と書かれており、西洋ミツバチが本来の対象となっています。日本ミツバチは野生昆虫です。
養蜂振興法の改定によって、日本ミツバチ養蜂をやる人の日本ミツバチを家畜と見なして家畜保健衛生所はカウントするようになりましたが・・・養蜂ではないビーフォレスト活動により営巣した日本ミツバチは家畜対象になりません。
どちらにせよ、日本には野生昆虫(日本ミツバチや花バチ)が何らかの病気や異変があっっても届ける先がないのです。また、異変があっても調査や対応する組織や法律もありません。

NPO法人 ビーフォレスト・クラブは、日本ミツバチや「花バチ」が減少状況を調査してビーフォレスト環境指標MAPなどの制作を進めています。日本ミツバチは減っているのか、どのような状況なのかを事実を確かめる必要があります。その実態を社会に知らしめるためです。本来は、自治体や政府が対応すべきことだと思うのですが・・・。